Case

FAI femoroacetabular impingement
(股関節インピンジメント)

FAI femoroacetabular impingement
(股関節インピンジメント)


概説

関節内で関節唇(関節の縁にある繊維性軟骨)や関節軟骨のぶつかりや挟み込み(impinge)を受ける状態をいいます。
関節外で腸腰筋が挟まる関節外インピンジメントも存在する。
小児期や若年層からもみられる事も多く、年齢が若い程無痛であるケースから、スポーツ等の負荷やしゃがみ込みでの動作負荷後に関節唇が損傷されることが考えられます。高齢に近づく程変形性関節症が伴っているケースも多いとされます。当施設では腰や座り猫背のファクターとして関節可動域及び関節弾力テスト(joint play test)を実施時に見受けられるケースも多いです。

大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)は股関節と骨盤の関節部にぶつかりや挟み込みを生じ、有痛無痛ケース問わず可動域制限が確認されます。

具体例として、
・股関節骨盤周辺に痛みがある。特に鼠径部(付け根)に。
・膝(脚)が高く上がらない又は上がるけど腰が曲がる代償動作で正常と思い込んでいる。
・股関節を90°まで曲げて内側に倒すと鼠径部に痛みが出たり、可動域制限や固いぶつかり感を感じる。
・股関節が水平に開かない。
・脚を上手に組めない、組むと腰が丸く猫背になる。
・しゃがめない等。

日常に潜んでいて痛みが出たり出なかったりで初期は無痛経過で見過ごすことと思われます。特徴として股関節可動域の最終域感(end feel)に詰まり感や痛みがあります。軽いスポーツ後に容易に単純関節炎を発症するケースでも、インピンジを頻回に繰り返している可能性も考えられます。

原因

筋の牽引作用の不均衡(muscle imbalance)や関節不良アライメントや歪み関節包内の滑走性低下、末梢神経のテンションや滑走性低下により生じる作用(上記の筋・関節に作用)などによりインピンジを引き起こすもの。
骨格には個体差があり、股関節と骨盤の比率で骨盤側が狭い又は小さいタイプ(臼蓋形成不全)や、関節の溝が深いタイプ、関節内摩擦やぶつかり、挟み込み(impinge)の積み重ね等で軟骨の擦り減りが起こり、関節が狭くなり発症するケースや、大腿骨の関節部にぶつかりによって骨隆起(bump)が形成され、そこで更にインピンジが起こるケース。変形性関節症の進行により関節の狭小化が進んだケース等。

治療法

超音波を下腿のある特定の箇所に、股関節の関節可動域最終域にて神経にテンションをかけながら照射を行う特殊な技法を使います。遠隔操作の様に、神経の特性を利用して可動域改善とインピンジの改善を図ります。
神経モビライゼーションテクニックを参考に神経の滑走性に対し、神経の反射特性(ゴルジ反射・1b抑制)利用し、超音波で人為的に反射を操作する技法と、神経滑走の悪い部位(通路)を超音波の振幅で通路を無痛にてこじ開け、滑走を促通させる技法を同時に行います。
神経の反射特性には、末端から脊髄に末梢神経を伝って超音波の振幅により神経を守ろうとする情報が入り、その情報が安全装置の様に作動し、神経の伝導路にある筋などが弛緩する仕組みとなっておりますが、関節に対しては圧受容器も存在しておりますが、現時点では関節抵抗に作用したため結果的に関節可動域やインピンジが解消されたものとして記します。
関節や筋腱の受容器に制限を伝達させながら、坐骨神経の枝である下腿のある部位に照射し、神経の走行上(筋間)にstiffness(肉離れ跡の拘縮)が介在しているケースであっても、音波振動により素早く開通できる技法であります。原因が骨性や軟骨性ではないケースでは股関節の可動域制限は解除され、インピンジの改善を確認して頂けます。超音波で改善がみられなければ、手技にて他に神経のテンション箇所を特定し、神経滑走操作やストレッチを行います。更に、関節包の硬さ、拘縮が存在しているケースでは牽引ベルトを使用した関節モビライゼーション法も併せて行います。

経過報告

関節軟骨がインピンジや擦り減りによる痛みと可動域制限、しゃがめない、階段降下痛などを伴うケースで、スコア 股関節屈曲(曲げる)80~90°未満にてjoint play(関節の弾力感)が乏しい又はみられないケース、end feel(最終域の感覚)弾力のない固いぶつかり感(軟骨又は骨の接触感) 水平内転又は屈曲最終域からの内転が0°又は関節狭小化に伴い、屈曲方向に曲がる過程で外転外旋方向(斜め外側方向)に可動し、90°付近からの内転0°(関節面からの計測)※滑り症のDrehmann 徴候とは区別される。
40~60 代 男女上記数例を対象に、超音波を使った神経モビライゼーション及び神経操作と関節モビライゼーションによるアプローチを1/w~1/m 頻度で行った。
end feel にやや弾力感が残存しているケースでは数w~数ヶ月でインピンジの改善と可動域の改善をみた。
end feel が骨性様に固いケースでは12ヶ月以上経過後にインピンジの改善と可動域の改善をみたことから、骨性要因や加齢要因が勝らなければある程度の改善が見込めると考えられる。

補足

軟骨も身体と同じく常に古くなったものを壊して新しいものに作り変えての代謝を繰り返しています。しかし、加齢により代謝は遅れます。それに加え、インピンジや関節内での滑走低下、正常ではない関節内摩擦により軟骨は物理的負荷が増して摩耗し、代謝、再生が追いつかなくことが考えられます。
例えるなら、自動車のタイヤがフェンダーに接した状態で走るとゴムが削れてバーストしてしまうのと同様で、代謝プロセスのイメージとして、古いものは壊して新しくする事を繰り返します。〈破壊→再生→破壊→再生〉
インピンジ等の物理的悪条件下では〈破壊→破壊→再生→破壊→破壊→再生〉では再生のターンが追い付かないことが考えられます。保存療法は好適条件下で経過を使い変化を待つ事が必要とされます。保存条件が悪ければ組織再生や修復に時間を要するケースでは回復は期待出来ません。単なる機能障害とは違い、軟骨等の組織が傷ついていれば傷が治るのに良い条件をキープしなくてはなりません。材質により回復に要する時間や条件は異なりますことを参考にして頂きたく思います。

【orthopedics インピンジメント症候群 病態と治療 2014年 全日本病院出版会】
【orthopedics FAI 中期成績の考察と展望 2021年 全日本病院出版会】
【バトラー・神経系モビライゼーション 2014年 協同医書出版社】
【マリガンのマニュアルセラピー 2007年 協同医書出版社】
【THE Mulligan concept of Manual Therapy 2e 2019年 協同医書出版社】

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