Case

五十肩

五十肩


概説

壮年期以降に発症する肩痛の代表的疾患の一つであり、50代から特に多くみられます。最初は運動痛の自覚から始まる事が多いかと思います。
腕がだる痛くてポジションに困る。寝る姿勢が上手く取れない等、痛みが主体の時期【freezing phase】がみられ、その後徐々に肩が挙がらない、後ろに手が回らない、ズボンが上げられない。などの変化が現れだしたら関節が癒着し始めてきていて、機能障害に悩まされる可動域制限が主体で長い冬を思わせるかのような慢性期とされる時期【frozen phase】に入ります。
その後ある一定の条件や良い経過により回復する時期【thawing phase】の三つ時期に分けられます。
五十肩は幅広く使われる俗称であるため、特に発症してないケースから軽症例でも重症例でも使われるため、個人差がかなりみられる疾患でもあり、経過は必ずしも一定ではなく、決して侮ってはならない疾患です。
癒着に歯止めがかからずにとことん進行するケースもあり、脇が開かなくなってから治療を開始するケースもありますが、癒着の放置時間に比例して重症度や期間は増し、後遺症のリスクも考えられます。
糖尿病や喫煙習慣、入浴習慣、生活、労働環境も経過に大きく左右します。

原因

外傷後や過負荷の習慣、誤った運動方法、重労働、就寝姿勢から肩インピンジメント症候群からの移行、関節を包んでいる袋状の組織が繊維化や肥厚する。ギプス固定後の関節拘縮(関節が癒着して固まる)に併発、肩板断裂後に併発する等、原因や要因、機序は数多くあります。

中でも身体的要因として、関節アライメントにも特徴があり、
・肩の骨(上腕骨頭)が前に出ている。
・肩が硬くて後ろに手が回りにくい、回すと肩甲骨が翼状に浮き上がる。
・肩周囲の筋バランスが悪い。後下方の関節包が硬く縮んでいる等。
要因も幾つかあります。

正常肩であれば挙上時に自動的に上腕骨は外旋し肩峰とのインピンジを避ける仕組みとなっているが、拘縮例では関節包が縮んで硬くなるため挙上時に上腕外旋が不十分となりインピンジを発生させる要因となります。
【Management of Common Musculoskeletal Disorders FOURTHEDITION 2005 参照】

図解説

肩峰下インピンジの発生により肩峰下に炎症をきたし、炎症により出現したコラーゲン繊維等が関節の後下方に沈着し癒着を助長させ、後下方の関節包は短縮と繊維化、拘縮して行き、動かせば肩峰下や前方の靭帯当に挟まれたりぶつかったりとしてインピンジを繰り返します。
これは、拘縮が強ければ強い程肩が前上方位を取る傾向にあり、関節可動域の最終域での運動痛やインピンジがみられます。
関節包の後方下方の拘縮は肩関節の正常な軌道での運動の妨げ、拘縮箇所が伸びずに上腕骨頭の軸が上方や前方に移動しやすくなる動的アライメントが変化する現象も考えられます。
繰り返されるインピンジによりSAB(肩峰下滑液包)の炎症が強まれば腫れて更にインピンジが起こりやすく、痛みが強く出ます。
しかし、安静を優先に動かさないようにしていると癒着や関節拘縮のリスクは高まります。
拘縮が強く進行すれば、関節を包んでいる関節包は関節を狭めてゆき、関節内で身動きが取れなくなり、動かすだけで何処かが擦れたりぶつかったりと、固さと痛みに阻まれて動きが更に制限されて行きます。

グラフ図

症状の強い例を参考にしたグラフとなりますが、施術回数1~2回/週を目安に作成しております。
年齢差、生活環境等により経過は異なります。
早期治療により拘縮期に差し掛かり癒着をコントロールしたケースでは可動域制限が少ない状態で経過する事があります。

施術方法

特に拘縮の出現が強い箇所である関節包の後方から下方にかけて、拘縮部を伸張させながら超音波照射を施し、関節モビライゼーションにより関節包の拡張と可動域改善を図ります。特に強い拘縮箇所においては照射角を変えながら行う十字照射や、照射と関節モビライゼーションを頻回に交互に繰り返します。
筋に対しては、短縮した部位のストレッチを行います。

画像参照 関節モビライゼーション法
・関節面に対して平行に骨を滑走させる手技。
・関節内部から関節包の伸張を図る手技。

インピンジを回避し、痛みをコントロールしながら進めることができます。
関節包が伸張される際は炎症部に接触がなければ無痛で行えます。
ダイレクトに拘縮箇所に伸張を加えれるのが特徴です。

経過概要

炎症期ではインピンジや痛みがみられれば機能改善と好適条件下での安静を保つ事が主となります。この時既に後方tightness(関節包や筋などが固くなっている)が潜在している事もあります。
拘縮期では炎症部を傷つけない様に積極的に超音波及び関節包の拡張と筋の短縮除去、アライメントの適正化を行い、関節包内の拡張により治癒促進を図ります。
筋や関節包の短縮、拘縮の影響を受け血流障害となる箇所の改善も図ります。
拘縮期から寛解期に差し掛かる際は自主的な運動療法やストレッチを行う事もお勧めします。この時期からは好適条件も整い治癒力も高まり、積極的な加療が少なくても関節可動域は各方向+30°程が見込まれます。
関節の弾力も正常化に近づき、手技の効き方も違い感じる事でしょう。

予後

【“even the most severe cases recover with or without treatment in about two years”
といわれるようにどんなに悪くても2年以内に軽快するGreyに代表される報告など発症より1~2年すると軽快するとの考えもあるが、一方、症状が3年以上残存するとの報告もある。Shafferらはidiopathic frozen shoulderを平均7年間経過観察し、50%に軽度の疼痛と可動域制限のいずれかもしくは両方を認めたと報告している。だいたい6~36ヶ月の間に70%以上が自然に治癒する。強い関節拘縮を残すものはわずかである。高岸は発症後平均38ヶ月経過した時点でアンケート調査を施行し、21%の症例に少なくとも軽度の疼痛が残存し、日常生活動作では高所のものをとることや結帯動作などが困難な症例を認めた。】
【神中整形外科学 改訂23版 南山堂 より引用】

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